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歯科医療における補てつ物等のトレーサビリティ

歯科医療における補てつ物等のトレーサビリティに関する指針について

補てつ物等のトレーサビリティについて正しく知ろう!

2011年6月28日に厚生労働省から「歯科医療における補てつ物等のトレーサビリティに関する指針について」通知がありました。 当サイトでもこの指針に基づきトレーサビリティに寄与出来るシステム開発を進めてまいります。
まずは、厚生労働省からの通知文章をご参照ください。

参考資料  ≪補てつ物管理票PDF≫  ≪補てつ物管理票・入力フォーム付きPDF≫
        ※上記リンクの上で右クリックしてデスクトップ等に保存してご利用ください。

平成23年6月28日
医政発0628第4号

各 都道府県知事 殿

厚生労働省医政局長

 歯科医療における補てつ物等のトレーサビリティに関する指針について国外で作成する歯科医療の用に供する補てつ物等については、これまで「国外で作成された補てつ物等の取り扱いについて」(平成17年9月8日付け医政歯発第0908001号医政局歯科保健課長通知)及び「補てつ物等の作成を国外に委託する場合の使用材料の指示等について」(平成22年3月31日付け医政歯発0331第1号医政局歯科保健課長通知)により、その品質の確保に努めるよう周知してきた。
しかしながら、歯科医療技術の進展、補てつ物の作成委託に係る形態及び物流システムの多様化に伴い国外で作成された補てつ物等の安全性について関心が高まってきたことを踏まえ、より安心で安全な歯科医療を確立するため別添のとおり「歯科医療における補てつ物等のトレーサビリティに関する指針」を策定したので、今後はこの指針の内容を御了知の上、貴管内及び管下の市町村(特別区を含む)、関係機関、関係団体等に周知するとともに、歯科医療従事者等に対して周知の徹底及び遵守の要請を図られたい。

歯科医療における補てつ物等のトレーサビリティに関する指針 (平成23年6月)

第1. 経緯
歯科医療の用に供する補てつ物等は、患者を治療する歯科医師が歯科医学的知見に基づき個々の症例に即して適切に判断し、当該歯科医師の責任の下、安全性に十分配慮した上で作成されるものである。
近年、歯科医療技術の進展やインターネットの普及等に伴い、補てつ物等の委託過程及び作成過程並びに歯科材料の流通過程が多様化していること、または補てつ物等に含まれる成分に対する関心の高まりが見られること等から、法令等に基づく制度の運用のみならず様々な対応が必要とされている。
このため、厚生労働省では、「国外で作成された補てつ物等の取り扱いについて」(平成17年9月8日付け歯科保健課長通知。以下「平成17 年通知」という。)において、国外で作成された補てつ物等を患者に提供する際の情報提供等の留意事項を周知するとともに、「補てつ物等の作成を国外に委託する場合の使用材料の指示等について」(平成22 年3 月31 日付け歯科保健課長通知。以下「平成22 年通知」という。)を発出し、補てつ物等の作成を国外に委託する場合の遵守事項として、
・ 作成場所を明示して指示を行うとともに、当該指示の要点を診療録等に記録すること
・ 使用する歯科材料を明示して指示を行うとともに、当該指示の内容の要点を診療録等に記録すること等を示し、現行制度の下、補てつ物等の安全性の確保に努めている。
今般、補てつ物等に関する専門家と意見交換を進め、また、トレーサビリティの仕組みを先駆的に確立してきた食品・農業分野の専門家等の意見も参考にし、現時点で実行可能な方策として「歯科医療における補てつ物等のトレーサビリティに関する指針」(以下「指針」という。)を取りまとめた。今後、本指針に基づき、治療にあたる歯科医療機関や歯科医師、委託先等を主体として、その委託過程及び作成過程並びに含有成分等に関する必要な情報を遡及し、又は追跡できる体制を構築していくことが必要である。

【参考:トレーサビリティの定義等】
トレーサビリティとは、計測機器の精度や物品の生産・流通履歴を示す用語であり、平成15年3月に農林水産省が作成した「食品トレーサビリティ導入の手引き」(以下「手引き」という。)により一般的に用いられるようになった。
食品のトレーサビリティについては、手引きにおいて「生産、加工および流通の特定の一つまたは複数の段階を通じて、食品の移動を把握できること」と定義されている。

第2. トレーサビリティの趣旨
国内の歯科技工所に補てつ物等の作成を委託する場合は、歯科技工士法に基づく歯科技工指示書により歯科医師が委託先や歯科材料等を指定することから、トレーサビリティは確保されていると考えられる。
一方、国外に補てつ物等の作成を委託する場合は、補てつ物等の委託過程及び作成過程並びに歯科材料の流通過程等が複雑になることから、トレーサビリティの確保が困難なケースが想定される。
そこで、より安心で安全な歯科医療を確立するために、歯科医療機関、歯科医師、委託先、患者等の全ての関係者が、補てつ物等の委託過程及び作成過程並びに含有成分等に関する必要な情報を共有出来る仕組みを構築する必要がある。

第3. トレーサビリティの確保のための具体的方策
トレーサビリティを確保するためには、主として以下の時期のそれぞれにおいて、関係者が適切に補てつ物等に関する情報を管理する必要がある。

1. 歯科技工所等に補てつ物等の作成を委託する時
国内の歯科技工所に補てつ物等の作成を委託する場合、歯科技工士法に基づき、委託先、使用材料等その他定められた情報を含む歯科技工指示書によらなければならない。また、近年、補てつ物等の委託形態の多様化や歯科技工所の運営形態の変化が大きいが、これまでどおり歯科医師と歯科技工士との間で密接な連携を確保することが必要であり、その指示内容が適正に運用される必要がある。
同様の観点から、国外に補てつ物等の作成を委託する場合にあっては、以下の2点に留意が必要である。

(1)国内で流通する歯科材料については、薬事法に基づいて認証されており、品質や安全性等が確保されているが、国外で流通する歯科材料については、各国において品質等に関する基準が異なっているだけでなく、国内法がおよばない。このため、歯科医師は、平成22 年通知において示した以下の事項を遵守する必要がある。
ア. 使用する歯科材料を明示して指示を行うとともに、当該指示の内容の要点を診療録等に記録すること。
イ. 指示に際しては、歯科材料の組成・性状や安全性等に関する情報を添付文書等により事前に把握し、ISO 規格や「歯科鋳造用ニッケルクロム合金(冠用)の製造(輸入)の承認申請について」
(昭和60 年3 月30 日付け薬審第294 号薬務局審査課長通知)等で定める基準を満たした歯科材料を選定した上で、当該歯科材料が特定されるよう、製品名(製造販売業者名を含む)等を明示して指示を行うこと。

(2)歯科医師は以下に掲げる記載事項等を整理した帳票等を用いることにより、歯科医療機関及び委託先と連携を図り、指示した歯科材料で作成されたことの確認のみならず、補てつ物等の作成過程等、必要な情報を一元的にかつ容易に把握・管理できる仕組みを構築すべきである。このため、日本におけるトレーサビリティの取組の趣旨を伝えるとともに、当該委託先が上記の帳票等を適切に記入することができるよう、納品される補てつ物等の歯科材料に表示されている製品、製造販売業者の名称、認証番号及びロット番号等を記録しておくよう依頼する必要がある。なお当該帳票等の例として、「補てつ物管理票」(資料)を作成したので、参考とされたい。
 ア. 委託する際に歯科医師が記載する情報
  ・ 発行の年月日
  ・ 歯科医療機関に係る情報(住所、名称等)
  ・ 歯科医師名
  ・ 補てつ物等の名称
  ・ 歯科材料(製品、製造販売業者、使用材料の名称等)
  ・ 設計及び作成の方法
  ・ 委託先に係る情報(住所、名称等)
 イ. 委託先等が記載する情報
  ・ 歯科技工作業を実施した施設に係る情報(住所、名称、作業責任者名等)
  ・ 歯科技工作業に係る情報(受取日、作業日及び作業内容、最終確認日、発送日等)
  ・ 歯科補てつ物等に含まれる歯科材料に係る情報(組成、認証番号、ロット番号/製造番号等)
 ウ. 補てつ物等の引渡しの際に歯科医師が記載する情報
  ・ 引渡しを受けた日
  ・ 引渡しを受けた歯科医師名

2. 歯科医療機関に補てつ物等を引き渡す時
国内の歯科技工所は、歯科技工を行う場合にあっては、「歯科技工所の構造設備基準及び歯科技工所における歯科補てつ物等の作成等及び品質管理指針について」(平成17年3月18日付け医政局長通知)において、歯科技工録の作成が義務づけられている。このため、国内の歯科技工所は、補てつ物等を歯科医療機関に引き渡す際、こうした帳票等を用いて補てつ物等に関する必要な情報を当該歯科医療機関に提供している。
同様の観点から、国外に補てつ物等の作成を委託する場合にあっては、歯科医療機関に補てつ物等が引き渡される際に、委託先から「補てつ物管理票」及び使用された歯科材料に関する帳票等を取得し、指示内容等に基づき作成されたかどうか確認を行う必要がある。

3. 患者に補てつ物等を装着した後
補てつ物等に係るトレーサビリティシステムの構築に当たっては、患者のニーズを十分に踏まえたシステムとすることが重要であり、歯科医師は、患者からの求めに応じて適切に情報提供が行えるよう、補てつ物等について取得した情報を適宜管理しておくことが必要である。
特に、国外に補てつ物等の作成を委託する場合には、平成17 年通知を遵守する必要があり、患者に対する情報提供の1つの手段として、補てつ物等の委託に関する情報を院内の受付等に掲示すること等も考えられる。
なお、補てつ物等に関する情報を記録した帳票等は、歯科医師法23条、「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律等の施行等について」(平成17年3月31日付け医政発第0331009号・薬食発0331020号・保発第0331005号厚生労働省医政局長・医薬食品局長・保険局長連名通知)、「診療録等の保存を行う場所について」 (平成14年3月29日付け医政発0329003号、保発0329001号)等に基づき、適切に取り扱われることが必要である。

第4. 補てつ物等の品質の確保
補てつ物等はオーダーメイドであり、個々の患者の状態に応じて作成されるため、品質に関する客観的な評価方法は今後の検討課題であるが、関係者においては、例えば、以下に示すような情報を活用し、主体的に品質確保の取組を進める必要がある。
 ・ 品質管理に関する国際標準化機構が定めた規格(ISO9001)
 ・ 「補綴歯科治療過程における感染対策指針」(2007 日本補綴歯科学会)
 ・ 「歯科技工所の設備・環境と品質管理・品質保証のあり方」(歯科技工Vol.32.No4.2004.4)

第5. 今後の課題について
補てつ物等に係るトレーサビリティシステムについては、指針に基づき、関係者が主体的に取り組むことが重要である。
なお、指針の内容については、歯科医療を取り巻く環境の変化や指針の運用実績等を踏まえ、今後、必要に応じて見直しを行うこととする。

<参考:米国・中国における取組>
・ 米国において
米国食品医薬品局 (U.S. Food and Drug Administration: FDA)が監督省庁となり、連邦食品医薬品化粧品法 (Federal Food、 Drug、 and Cosmetic Act)における医薬品製造管理基準 (Quality System Regulation /
Medical Device Good Manufacturing Practices:QS/GMP)により管理している。
・ 中国において
中国衛生部国家食品薬品監督管理局によって、歯科技工所を開設する際には医療器械生産企業許可証の取得が義務付けられるとともに、補てつ物等を作成する際には医療器械商品登録証の取得が義務付けられており、補てつ物等の安全性の確保に努めている。

<参考文献>
1 「国外で作成された補てつ物等の取り扱いについて」(平成17 年9 月8 日付け医政歯発第0908001号厚生労働省医政局歯科保健課長通知)
2 「補てつ物等の作成を国外に委託する場合の使用材料の指示等について」(平成22 年3 月31 日付け医政歯発0331 第1 号厚生労働省医政局歯科保健課長通知)
3 「食品のトレーサビリティシステム導入の手引き」(農林水産省食品トレーサビリティシステム導入の手引き改訂委員会)
4 「歯科技工所の構造設備基準及び歯科技工所における歯科補てつ物等の作成等及び品質管理指針について」(平成17 年3 月18 日付け医政発0318003 号厚生労働省医政局長通知)
5 「歯科補綴物の多国間流通に関する調査研究(平成20・21 年度厚生労働科学研究費補助金)」
6 「産業廃棄物管理票マニフェスト」(日本産業廃棄物処理振興センター)
7 National Association of Dental Laboratory: The document is for submission for the October 1st 2007
meeting of the Interagency Working Group on Import Safety. Retrieved September 10、 2007
8 National Association of Dental Laboratory: Food and Drug Administration and Federal Government
Officials Explore Oversight of the Dental Laboratory Industry、 NADL Responds with Best Practice
Guidelines and Recommendations. Retrieved October 2007.